2020年4月から民法改正~賃貸借契約への影響は?

あけましておめでとうございます!大スケです!

本年も不動産投資を中心とした資産運用等について自分の学び、気づきをブログを通じて発信していきます。たまに、僕の趣味や日常生活の出来事についても書きたいと思いますので、読んでいただけると幸いです。

 

さて、今回は世間でも話題になっている民法改正」!

民法は,明治29年(1896年)に制定された後,約120年間ほとんど改正がされていませんでした。
この間,日本の社会・経済は,取引量の増大,取引内容の複雑化・高度化,高齢化,情報伝達手段の発展など,様々な面で大きな変化、進展がありました。

そのため、取引に関する最も基本的なルールを定めている民法の規定を社会・経済の変化に対応させる必要がありました。また,民法が定める基本的なルールの中には,判例法理を前提として解釈に委ねる事例が多いため、法律の専門家でない国民一般にとって,基本的なルールが分かりにくい状態となっていました。


 そこで,民法のうち債権関係の規定について,取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に①社会・経済の変化への対応を図るための見直し民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールの明文化を行うものです。

改正の項目は,小さなものまで含めると合計200程度あります。詳細は以下を参照。
法務省民法の一部を改正する法律(債権法改正)について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html

 

そこで、多岐にわたる改正項目の中で、僕のようにマンション投資(経営)に取り組む大家が必ず把握し、理解しなければならないことがあります。

それは「賃貸借契約に関する変更点」です。僕なりに大切なポイントを4つにまとめました。

 

①敷金について
賃貸借契約においては、契約時に敷金として一定額を賃貸人に預けることが慣例となっています。そして、契約終了時にこの敷金の返還をめぐって、その金額、返還時期等についてトラブルになることがよくあります。

しかしながら、現行民法には敷金に関するルールについての明確な規定がなく、その解釈は判例法理等に委ねられてきました。

そこで、改正民法では、敷金を「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」と定義付けるとともに、敷金の返還時期及び返還の範囲に関し、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき又は賃借人が適法に賃借権を譲渡したときに、未払賃料等の額を控除した残額を返還しなければならないものと規定しました。

これらは、いずれも判例法理等を明文化したものであるため、実務上は大きな影響がないものと思われます。

もっとも、改正民法では敷金について「いかなる名目によるかを問わず」と定義付けていることから、敷金とは異なり返還義務を負わない権利金等がある場合には、当該金員の性質を契約書上で明らかにし、敷金との区別を明確にしておくことが望ましいでしょう。

また、敷金の返還時期及びその充当関係についての規定はいずれも任意規定であり、別途当事者の合意で定めることができます。しかし、従来以上に厳格な判断をされる可能性があり、当該合意が認められるためには、契約書上で具体的に合意をする必要があるでしょう。

 

②賃借人の修繕権について
入居中の部屋に不具合(壁の亀裂、雨漏り等)が発生した場合、賃借人は、賃貸人に対して修繕をするように請求することはできますが、賃借人が自ら修繕をすることができるか否かについては現行民法上明らかではありませんでした。


そこで、改正民法では、これまでの判例法理等に沿って、賃借人から賃貸人に対して通知をしても賃貸人が修繕をしない場合及び急迫の事情がある場合には、賃借人が修繕することができる旨を明文化しました。

これにより、賃借人は、賃貸人が修繕をしてくれないような場合には、自ら修繕を行い、その費用を賃貸人に請求できることが権利として認められることとなりました。

このように、賃借人の修繕権が民法上明確に認められたことにより、今後は賃借人の恣意的な修繕がなされたり、意図せず多大な修繕費用の請求を受けたりすることも危惧されます。

そのため、賃貸人の立場からは、契約書において賃借人の修繕権を排除しておくか、又は特約で賃借人の修繕権が発生する条件及びその修繕の範囲等を明確にしておくことが望ましいものと思われます。

 

③原状回復義務について
賃貸借契約は、契約終了後に賃借物を「原状」に戻して返還する必要がありますが、「原状」がどのような状態を指すかは、現行民法上は明らかではありませんでした(これが(1)で記述した敷金の返還をめぐるトラブルの要因の一つです)。

そこで、改正民法においては、これまでの判例法理等と同様に、賃借物に生じた損傷のうち、「通常の使用及び収益によって生じた損耗(通常損耗)」及び「経年変化」を除いたものにつき、賃借人は原状回復義務を負うことが明記されました。

しかしながら、「通常損耗」及び「経年変化」がどのような損傷を指すものであるかは依然として明らかではありません。これまでと同様にその点が争いとなる可能性が高いものと思われますし、賃貸人の立場としては「通常損耗」や「経年変化」を含めて原状回復してもらいたい場合もあるかと思われます。

原状回復に関する改正民法の条項は任意規定ですので、契約書においては、費目ごとにその負担者を決めておく等の工夫をすることが望ましいでしょう(なお、判例上、通常損耗について原状回復義務を負わせる場合には、原状回復の対象となる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記される等、具体的に合意することが必要とされていますので注意が必要です)。

 

④賃料債務の個人保証について
不特定債務について個人が保証することを「個人根保証」といい、賃貸借契約から発生する賃料を個人で保証する場合もこの個人根保証に該当します。

現行民法は、個人根保証のうち、貸付金等を主債務とするものに関しては極度額(保証する金額の上限)を明らかにすることを義務付けていましたが・・・

今回の改正により保証する債務の性質にかかわらず全ての個人根保証に対し極度額を設定することを義務付けました。

これに伴い賃貸借契約に個人の連帯保証人をつける場合にも極度額の設定が必要となります。

なお、極度額の設定がない個人根保証契約は無効となってしまいますので、賃貸人の立場で契約をする際には、極度額を明示する一文を追加することを忘れないように留意する必要があります。

また、極度額そのものの上限に関する規制はありませんが、今後その相場観が判例法理等で形成されていくものと思われます。

 

以上・・・


今回の民法改正により権利・義務に関するルールの変更・新設はもちろん、これまでの判例法理を前提とした解釈論が明文化されたことは、不動産契約の実務に大きな影響を及ぼすと思われます。

これからの不動産契約は、公序良俗に反しない限り、契約書どおりに実現していくことになりますので、想定される事項は全て契約書に盛り込むことになってくると思われます。

そのため、僕たちは契約当事者になりうることを念頭に置き、予期せぬ不利益を被らないように新民法のルールを学び、理解に努める必要があります。